アラサーぬるオタ婚活中!

アラサーでオタで元ゲーマーな女が婚活します。

初めての婚活パーティ③

サチに注がれる男たちの視線の熱量から、私は自分とサチとのレベルの違いを感じざるを得なかった。



まあ、本来は比べるまでもないのだ。


私は、容姿も良く見積もって中の下。

第一印象は、「暗い・怖そう・真面目そう」(実際言われた)

身長は低く、そのくせ標準体重なのでぽっちゃりしている。

一般的なオシャレに目が向いたのはちょうどこの頃。

それこそ学生時代は、ザ・オタサー女と言ったレースにフリルにリボンなブリブリ系を好んで着ていた(ア●シーズとか)。

趣味はゲームとアニメというオタっぷりの割に、ぬるかったのでガチのかたとは話が合わず、かといって非オタと話せるような趣味もなかった。

全くモテない、とまでは言わないが、(変なやつらだらけだが)はっきり言って、万人受けはしなかった。

中高はクラスからは一戦を引かれていた。

イジメのターゲットにもされたことがある。

いわゆる三軍所属の、キモい系女子だった。




一方サチは、とびきり美人という訳ではなかったが、学生時代からそこそこモテていた。

ふわっとした容姿からは優しさが滲み出ている。

サークルも、テニスとボランティア系を掛け持ちするアクティブっぷり。

趣味はテニスとお料理(これが本当に嫁にきて欲しいレベル)。

ジャニーズが好きだがジャニオタとまではいかない。

なにより人当たりがよく、周りにはいつもたくさんの人がいた。

クラスでも一軍の中に馴染んでいたし、
それなのにキモい系三軍の私とも、仲良くしてくれた。

まぁ、本人いわく一軍にいるのは色々気疲れもあり苦労したとのことだが。

サチは私にないものをたくさん持っていた。



誤解を招くが、サチへの感情は嫉妬じゃない。

サチのもっているものは全てサチの努力によって得られたものだ。

一方、自分は生きたいように生きて嫌われているのだから自業自得なだけ。




そんなこんなで、暫くするとスタッフがやって来て、パーティが始まった。


……始まっ、た?


いやいやいや、待て待て待て。


まだ男女比5:1やで。

初めての婚活パーティ②

そして迎えたパーティ当日。

サチからのメール(時代を感じる)によると、会場は地元の海浜公園。

恋人の聖地になってるようなちょっとしたデートスポットだ。

……聖地で結婚候補ゲットだぜ、ってやつか。(時代)

戦闘服のジャージを脱ぎ捨て、買ったばかりのゆるふわスカートを履き、いざ聖地へ。



到着すると、明らかにそれと分かるドピンクのフリップを持ったスタッフが。

そしていきなり案内されたのは、事務局の建物。

事件は会議室で起こるようである。

中には既に10人前後のメンズたち。下は20代、上は…推定50代まで。

まさかの女性一番乗りで、メンズたちの視線は一気に私へ向けられる。


おぉ、……これよ、これ。

メンズたちの視線を独り占めするなんて、何年ぶりか。

小学校の運動会で徒競走のゴール手前で漏らしたとき以来か。



そこに、サチ登場。

白いワンピに、レモンイエローのカーディガンがまぶしい。

私への視線は、割とすぐ反らされた(笑)

初めての婚活パーティ①

24の歳、独りになった私は焦っていた。

ちょうどその頃、高卒で就職した地元の同級生たちの結婚ラッシュがあったのだ。

当時やっていたSNSには、幼い頃から知る知人たちのドレス姿の写真がバンバンアップされた。

綺麗で、羨ましくて、焦った。猛烈に焦った。




そんな時、高校の同級生のサチから、地元の市が主催する婚活パーティがあると言う話を聞いた。

実はサチも当時遠距離で付き合っていた彼氏と別れたばかりだった。

「行こうかどうしようか迷ってて…」というサチに、

「社会勉強!!社会勉強だから!!」と、猛プッシュし、二人で参加申し込みをした。

前日には、サチと二人で参戦用の服を買いに行った。

なんせ私は仕事大好き人間だったので、平日休日問わず、ほぼ仕事着(8割方ジャージ)で生活していた。

男子はゆるふわが好きと言うサチ情報を胸に、白地に花柄のチュールスカートを買った。

前夜は興奮して眠れなかった。

その後の日々

Mとの別れの後、私はMとの接触を絶つために勉強した。

人生で一番勉強したのはいつか、と聞かれたら、私は迷わず「大学の後半2年間」と答えるだろう。

就職に必要な免許を取るための科目を履修し、更に空きコマには自分の知見を広めるためと称して履修可能限度ギリギリまで授業を突っ込んだ。

それでも4回生になると履修可能講義が減り、空いたコマの時間は、就職試験に向けて勉強した。

公務員試験の半年前からは、平日は朝3時間、昼3時間、夜3時間勉強した。(大学の講義は除いて)

土日はバイト。時間ではなく一回入ると終日潰れるので、時給は高くないがそこそこお小遣い程度にはなった。

ちなみにサークルも続けてはいた。Mのことは、ごく少数にしか伝えなかった。



このときの経験はそこそこ役に立った。

公務員試験も筆記は一発で通ったし。

二次の面接の際に、「学生時代一番頑張ったこと」を聞かれてばか正直に「勉強です」と答えて珍しがられたり。
(「今どき珍しいねー。皆ボランティアとかサークルとかばっかなんだよね」と言われた)

ちなみにプライベートでは、Mと別れた後、別の人とお付き合いした。

大学卒業と同時に遠距離になり、仕事や何やらのすれ違いで、4年近く付き合って、別れた。

その人とは、若いノリでいつか結婚~みたいな話も出ていたけれど、現実的に考えると乗り越えるものが多すぎて無理だった。



そして24の冬。

私はまた独りになった。

Mについて。⑤

とりあえず、彼の着替えが入った、●ニクロの袋をひっ掴んだ。

向かうはベランダ、そしてここは、5階。



「ぶるああぁあぁぁあ!!!!!!」




私(体育:2)の、渾身の投げ。

うっかり袋の口を下にして投げたので、、彼のシャツが、パンツが、宙を舞う。

固まるM。


怯むことなく、今度は物干しにあった、生乾きの彼の服、靴下、パンツ。


それから机上の原チャの鍵。


本棚の、漫画。


目についた私物を、片っ端から投げた。(飛距離:数メートル、落下距離:数十メートル)

さすがにゲームや携帯は、良心が咎めたので、投げずにコンビニ袋に入れた(良心?)。


最後に、財布の中の合鍵を奪い返し、財布はコンビニ袋に入れ、玄関に置いた。


その間、私を止めずに、呆然とするM。


「もう、二度と、来ないで」


Mは、黙って出ていった。



それから、Mの姿は見ていない。

家にも来ないし連絡は互いにしないし、サークルにも顔を出さなくなった(元々幽霊部員だったが)。

その内、私には新しい彼氏ができた。

そしてそのまま大学を卒業し、地元に戻ったので、その後はよく知らない。

大学を留年→中退したらしいという噂も聞いた。

もしあの日、私が彼を許せていたら、彼はどうなっていたのだろう。

今思えば、行動に移す前に、もっと話し合えばよかった。

さすがに、私物放り投げたのはやり過ぎだったし。



あれから10年。Mは、幸せで居るのだろうか。

Mについて。④

Mとの交際は、Kの時とは違い、オープンだった。

彼にとっては初めての彼女。

彼は私の存在を、家族にもオープンにした。

デートの時も並んで歩いてくれた。

Kにズタボロにされたプライドを回復するにはよかった。

不慣れ故のいざこざはあったが、幸せだった。



気付いたら、彼は週に5日は私の住むアパートに寝泊まりするようになった。

大学とバイトとサークル以外、全て私頼み。

食事も洗濯も風呂も、日によっては寝るのも。

生活費は当然、支払われなかった。

時々、バイト帰りに漫画だのぬいぐるみだのを買ってくる。

でも、漫画やぬいぐるみは、私の生活の足しにはならなかった。

イライラは半年かけて徐々に募り、遂に、爆発した。



私が大学から帰ってくると、部屋の鍵が開いていた。

(この日まで知らなかったが、いつのまにか財布の中の合鍵を持ち出されていた)



中から、複数名の人間の声。



「お、帰ってきたな。」

「あ、どもー。」

「お邪魔してまーす」

そこには、私の家の買い置きのお菓子やアイスを勝手に食べる、彼と見知らぬ男女。

話を聞くと、彼の高校時代の友人らしい。


あの、あんた(女)が勝手に使ってるグラス、私のお気に入りのやつですが……

その、あんた(男)ゲームやってるPC、私のですが……

私のベッドに寝転がってますけど(男女)……初対面ですよね……



それで、一気に冷めてしまった。


自分が出来る限りの丁寧な言葉で、二人には帰ってもらった。

当然彼は激昂した。

友達の少ない私に、仲良くなって欲しかったのだと。

でも私は、見ず知らずの人の家に勝手に上がり込み好き放題やる人間とは、友達になれないと、彼に告げた。



衝撃。



彼に頬を、叩かれた。


頬が熱い。


目に映るのは、ぐちゃぐちゃの部屋。


彼の私物だらけの、私の部屋。


涙が溢れて、

ついにキレてしまった。

Mについて。③

Mのキスハグループは、朝まで続いた。

起床時間になりYが起き出した頃、ようやくそれは止んだ。

Mは全く動じた様子もなくベッドから出ていき、何事も無かったかのような顔で過ごした。

そして、Yと一緒に家で朝御飯を食べ、「帰るわー」とあっさりと帰っていった。



残された私は、Mの積極的アプローチにドキドキがおさまらず、でもその後のMの無表情からはその後の展開も読めず、ただただ動揺していた。

そのうちあれは事故みたいなものだったのだと、気持ちを落ち着けて部屋を片付けた。



ピンポーン



インターホンがなる。階下のオートロックではなく、部屋の前。


そこにいたのは、Mだった。

「あのさ」

いつもの仏頂面で、Mは言った。


「俺たちって、もう恋人同士なんかな」



こうして、Mとの付き合いが始まった。


いま思えば告白だったのか謎だが。