Mについて。⑤
とりあえず、彼の着替えが入った、●ニクロの袋をひっ掴んだ。
向かうはベランダ、そしてここは、5階。
「ぶるああぁあぁぁあ!!!!!!」
私(体育:2)の、渾身の投げ。
うっかり袋の口を下にして投げたので、、彼のシャツが、パンツが、宙を舞う。
固まるM。
怯むことなく、今度は物干しにあった、生乾きの彼の服、靴下、パンツ。
それから机上の原チャの鍵。
本棚の、漫画。
目についた私物を、片っ端から投げた。(飛距離:数メートル、落下距離:数十メートル)
さすがにゲームや携帯は、良心が咎めたので、投げずにコンビニ袋に入れた(良心?)。
最後に、財布の中の合鍵を奪い返し、財布はコンビニ袋に入れ、玄関に置いた。
その間、私を止めずに、呆然とするM。
「もう、二度と、来ないで」
Mは、黙って出ていった。
それから、Mの姿は見ていない。
家にも来ないし連絡は互いにしないし、サークルにも顔を出さなくなった(元々幽霊部員だったが)。
その内、私には新しい彼氏ができた。
そしてそのまま大学を卒業し、地元に戻ったので、その後はよく知らない。
大学を留年→中退したらしいという噂も聞いた。
もしあの日、私が彼を許せていたら、彼はどうなっていたのだろう。
今思えば、行動に移す前に、もっと話し合えばよかった。
さすがに、私物放り投げたのはやり過ぎだったし。
あれから10年。Mは、幸せで居るのだろうか。