Mについて。④
Mとの交際は、Kの時とは違い、オープンだった。
彼にとっては初めての彼女。
彼は私の存在を、家族にもオープンにした。
デートの時も並んで歩いてくれた。
Kにズタボロにされたプライドを回復するにはよかった。
不慣れ故のいざこざはあったが、幸せだった。
気付いたら、彼は週に5日は私の住むアパートに寝泊まりするようになった。
大学とバイトとサークル以外、全て私頼み。
食事も洗濯も風呂も、日によっては寝るのも。
生活費は当然、支払われなかった。
時々、バイト帰りに漫画だのぬいぐるみだのを買ってくる。
でも、漫画やぬいぐるみは、私の生活の足しにはならなかった。
イライラは半年かけて徐々に募り、遂に、爆発した。
私が大学から帰ってくると、部屋の鍵が開いていた。
(この日まで知らなかったが、いつのまにか財布の中の合鍵を持ち出されていた)
中から、複数名の人間の声。
「お、帰ってきたな。」
「あ、どもー。」
「お邪魔してまーす」
そこには、私の家の買い置きのお菓子やアイスを勝手に食べる、彼と見知らぬ男女。
話を聞くと、彼の高校時代の友人らしい。
あの、あんた(女)が勝手に使ってるグラス、私のお気に入りのやつですが……
その、あんた(男)ゲームやってるPC、私のですが……
私のベッドに寝転がってますけど(男女)……初対面ですよね……
それで、一気に冷めてしまった。
自分が出来る限りの丁寧な言葉で、二人には帰ってもらった。
当然彼は激昂した。
友達の少ない私に、仲良くなって欲しかったのだと。
でも私は、見ず知らずの人の家に勝手に上がり込み好き放題やる人間とは、友達になれないと、彼に告げた。
衝撃。
彼に頬を、叩かれた。
頬が熱い。
目に映るのは、ぐちゃぐちゃの部屋。
彼の私物だらけの、私の部屋。
涙が溢れて、
ついにキレてしまった。